めったに無い事いろいろ

このところ,ブログをさぼっていたが,その間,めったにないことがいろいろと起きたので,これらについて書いて置こう。例によってすべて古い出来事で,ニュースとしてお知らせするには賞味期限切れである。

お品書き

  1. 地震
  2. 中秋の名月と満月
  3. パースでグランドファイナル
  4. メルボルンが優勝
  5. おまけ
  6. おまけのおまけ

1.地震

日本の皆さんもニュースで見てご存じかもしれないが,先週火曜日の朝,こちらの時間で午前9時15分(日本時間8時15分)ごろ,メルボルンの北北東180㎞あたりを震源とする地震があった。規模はマグニチュード5.9。メルボルンでの震度は3程度か。私はこの日ちょっと寝坊していて,この時間ちょうどシャワーを浴びていた。あれ?揺れたー!という程度のもので,立っていると震度は大きくて2ぐらいかと思った。また揺れたのも5秒以内と感じたが,実際には20秒ぐらい揺れたようだし,揺れも立っているとさほどと思わないがおそらく震度3ぐらいだったようである。「おそらく」としかいいようがないのはなぜかというと,日本と違って,気象庁から各地の震度とかの発表はない。大体,震度というものは日本独自のものでここでは知名度が低い。ただRichter Scale(マグニチュード)だけは通用する。

私がメルボルンに住み始めて30年だが,実際に身体に感じる地震は今回が2度目。その前にもあったが,その時は気づかなかった。ということで,揺れ自体は怖くなかったが,地震があったというめったにない事実に驚いた。

マグニチュード5.9というのは,数字的にはもうオーストラリアでは天変地異レベルであり,揺れもほとんどの人にとって初体験の大きさ。外に飛び出す人などもいて,その慌てようはあきれるばかり。もっとも建物は耐震構造でないので,これより大きい揺れだと本当に危ない。実際,繁華街の一角の古いビルで壁が崩落してレンガの瓦礫の海を作って通行止めになったりした。ということで大事件ではあった。

もし,メルボルンで地震があったと聞き,心配されている方がいるなら,心配ご無用。揺れは小さく,余震も身体にわずかに感じるものが数回あっただけ。私が気づいた余震は1回のみ。という取るに足らない地震だった。でも「めったに無い事」だったのは事実。

2.中秋の名月が満月と重なる

先週の中秋の名月はちょうど満月と重なった。え?中秋の名月というのは太陰暦の8月15日なので,満月が当たり前だと思っていたら,重なることが珍しいんだって?知らなかった!実際には月の満ち欠けの周期は29日ぐらいだが,きれいに24時間の倍数になっているわけではないので,太陰暦の日付が月齢とぴったり一致しているわけでない。そのため15日が満月になるとは限らず,逆にめずらしい事象なのだそうだ。勉強になった。

3.パースでグランドファイナル

AFL(Australian-rules Footbool League)のグランドファイナルはメルボルンのMCG(Melbounre Cricket Ground)で毎年9月の最終土曜日に開催というのがお約束だったのだが,去年はコロナ禍で中止。今年もメルボルンはロックダウンの真っ最中で,無観客というのも不評ということで,ついにメルボルン開催をあきらめ,WA(Western Australia)州Perthでの開催となった。前代未聞である。今までも,対戦チームが双方ともメルボルン以外のチームとなったら,それでもメルボルンでやるのか?みたいな議論があったが,今年はそういうことではなく,コロナのせいでPerth開催となった。ちなみに対戦チームはどちらもメルボルンベースのチームである。まあ,高校野球に例えれば,全国高校野球大会決勝を福岡ドームでやるようなものである。

4.メルボルンが優勝

で,このグランドファイナルで勝利し,今年のチャンピオンになったのはMelbourne Football Club,通称Demonsである。相手のWestern Bulldogsを140対66で圧倒しての勝利だった。前半終了前にBulldogsが立て続けに得点して,わずかにリードして折り返したが,後半Demonsが試合を支配し,あっという間に逆転して,その後Bulldogsにほとんど追加点を許さずリードを広げ,終わってみればダブルスコア以上だった。

めったに無かったのはこのチームがグランドファイナルで勝ったのは1964年以来57年ぶりということで,もうこれは阪神が日本シリーズで勝つとかをはるかにしのぐ盛り上がりであった。

5. おまけ

ここで,おや?と思うかもしれない。勝ったのがMelbourneだが先ほどどちらもメルボルンベースのチームと書いた。

ここがややこしいのだが,AFLというのは元々VFLというリーグで,最初の文字AはAustraliaのA,VはVictoriaのVである。ということで,元はビクトリア州のフットボールリーグだったのが全国区になったのだ。現在18チームが所属するが,そのうち半分の9チームがメルボルンのチーム。1チームがGeelongというメルボルンの隣のビクトリア州第2の街のチーム。そして,Queensland州に2,New South Wales州に2,South Australia州に2,Western Australia州に2という内訳。特に他州のチームは1チームずつだったのだが,この10年ぐらいでマーケティング戦略として2チームに増えたものである。

で,なぜこのDemonsだけがメルボルンを名乗っているの?と思うかもしれないが,これはメルボルンの中にあるメルボルンという街(サバーブ)のチームという意味である。その他のチームもビクトリア州のものは基本的にサバーブ名を名乗っている。例外が相手のWestern Bulldogs。このチームはWestern Australia州のチームという意味ではなく,あくまでメルボルンの西部サバーブの代表という意味を持つ。元々はFootcrayというサバーブ名を名乗っていた。

東京都に,東京区というのがあると思って欲しい。その区の代表がTokyo Samuraisというチームだが,他にも,Shinjuku GoldensとかNakano Mandarakesだとか,Nerima Daikonsだとか,Toshima 年増ーズとかの東京のチームがたくさんあるという感じだと思ってもらえばよい。

ところでシドニーはメルボルンより人口が多いのに2チーム(Sydney SwansとGreate Western Sydney)しかなく,メルボルンは9チームもある。どうして?と思うかもしれない。実は New South Wales州中心のAFLのリーグが別にあるの?というと,そうではない。これには明確な理由がある。シドニーではAFLは人気がないのだ。シドニーのあるNew South Wales州,そしてブリスベン,ゴールドコーストがあるQueensland州の2州では,AFLよりラグビーリーグが圧倒的人気なのだ。そしてこの2州を中心としたラグビーリーグの全国版リーグ,NRL(National Rugby League)というのがあって,2州ではこちらが一番人気のスポーツなのだ。これは日本ではあまり知られていない事実だ。この2州のみ(NSW州の中のACT=キャンベラも含む)がオーストラリアでは例外的にラグビーリーグが盛んなのである。フットボールを指す「フッティー」というスラングがあるが,フッティーとシドニーで言えばそれはラグビーリーグの事であり,メルボルンではAFLを指す。そのぐらい違う。

ついでに言うと,この「ラグビーリーグ」の「リーグ」というのは関東大学ラグビー対抗戦と関東大学ラグビーリーグを区別する一般名詞のリーグではない。この関東大学ラグビーとか,オールブラックス,オーストラリア代表ならワラビーズがプレーしているラグビーというのは正確には「ラグビーユニオン」というラグビーである。これとは別に「ラグビーリーグ」という13人制のかなり違うルールで行われるラグビーがあるのである。イギリス北部でユニオンから派生した別コードのスポーツで,日本ではほとんど知られていないが,すでに100年を超える歴史を持つ。

ニュージーランドではオールブラックスのラグビーユニオンが1番人気だが,オーストラリアではワラビーズのユニオンより,ラグビーリーグが一番人気なのである。

6. おまけのおまけ

さて,最後に何年に一度とかとは別の意味の「めったに無い事」をもう一つ。通常9月最終土曜のグランドファイナルの前日の金曜日はメルボルンは祝日で休みとなる。これは約10年前から始まったのだが,それ以前に11月第一火曜日は「メルボルンカップ」という世界的にも有名な競馬のレースがあり,この日,やはりメルボルンは休みとなる。競馬が理由で休みになるなんてここだけだと思うが,さらにもう一つ,スポーツイベントを理由に休みになるメルボルンってやっぱりめったに無い面白いところである。

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