原発が危ない。福島第一原発は,現在の状況が一段落したとしても,その先何年間も冷やし続け,その後,さらに何年かかけて,廃炉にしていくという作業が続くだろう。
この先,原発をどうするか。長期的には,国民一人ひとりが考え,結論を出さなくてはならない。何かあったら,日本全土どころか,地球規模で被害をこうむることもあることを,今回のことで学んだはずだ。非常に高い授業料だったのだから,新しい考え方,新しいアクションが生まれてこなければ,日本もおしまいではないか。
短期的に見て,今すぐ原発を停めることはできないだろう。節電だそうだ。協力するしかないだろう。私はよその国にいるので関係ないのだが,日本にお住みの皆様は,我慢していただくしかない。
そこで,私は私の職業に沿って,これから何ができるかを提言したい。家庭で,節電するといった場合,何が一番電気を食っているのだろう。
たとえば,テレビなど,単にスイッチを消しても,実は電気を食っている。これはほとんどの人が知っている。したがって,家を出るときには電源を抜くなんていうのが,かなり効果的で,月々の電気代でいくら浮くなんてことをよく宣伝している。
これなどは,メーカーがもっとまじめに考えるべきであり,スイッチを切ったら,電気を全く消費しないようにすることができるはずである。次回画面が出るのが少々遅くなってもいいではないか。
そして,電力を食うという意味では,エアコンがやっぱり一番罪深いのではないか。これもあくなき省エネ化で,消費電力をもっと減らすことができるはずだ。消費者に我慢させるのではなく,売る側がもっと考えなくてはならない。
ところで,オフィスに目を転じると,エアコンは人のためではなく,ビル全体を冷やす「空調」として,家庭よりも長い期間と時間帯で稼動しているのではないか。ひとつには,ビルの高層化,そしてデザイン的なことから,総ガラス張りみたいなビルが増え,窓も嵌め殺しになっていることに因ると思う。高いところは風通しがいいのだから,風を入れられるようにするだけで,快適な温度を保つことができる日が多いのではないか?もっと外気を積極的に利用する空調があっていいだろう。
オフィスの空調は,コンピューターのためにも重要になっている。
さて,ここからが私の専門領域になる。
サーバールームというのは,一年中冷房が効いているのがお約束である。冷やしてあげないと,サーバーが持たない。そもそもここに問題がありはしないか?
コンピューターの高速化は,プロセッサのサイズを小さくする事とほぼ同義である。小さくして,速度が増すと,熱が出る。これを冷やさなくては,CPUその他の半導体が熱暴走してしまうのだ。効率良く冷やすには,部屋全体を冷やすのがいいということになる。
この辺をどうにかできないのだろうか?
少し遅くなってもいい。室温,あるいは,外気を直接取り込める換気のいい部屋に置けば,外気がたとえ40度でもそこそこのスピードがでるシステムは作れないのか?もちろん,熱は出る。出るが,その熱は外に逃がしてやるように排気をする。冷房だって,結局は熱を外に逃がしているのだ。自然排気で冷やすのと,冷房経由で冷やすのでは,もちろんコンピューターの冷却効率という意味では後者が優れているが,トータルで発生する熱,そしてトータルで必要な電力という意味では,前者が断然環境に優しいはずである。
少々遅くなった分は,並列処理でカバーする。このとき,スペースも余分に取る事になるが,これも,何か工夫があるだろうし,最悪,スペースを余分に取る事には目をつぶるしかない。
そして,どうしても,ある程度しっかり冷やしたいというのなら,サーバーはいっそ寒冷地に置いてはどうか?
幸い,日本には常時涼しい山間部がたくさんある。あるいは,北海道だってある。(贅沢を言えば,北方領土があったらもっといいか?)
こういう場所に,サーバー設備を置き,これをクラウドとして使う。スペースが少しぐらい余分になろうが,構わない。
これこそが,日本のコンピューター産業のこれからの道ではないか?
オフィスには,もうサーバーを置かない。ほとんど電力を食わない端末だけを置く。そうは言っても,各端末は能力的には,一応現行のPCの能力に近いものはある。ただ,ストレジはそんなに要らないだろう。リモート接続の機能と,ブラウザが動けばいいはずだ。メールもグループウェアもオフィススイートもブラウザ上で十分機能するはずだ。
つまり,シンクライアント(thin client)である。コンピューターパワーが必要なサーバーはすべて寒冷地にあるクラウドサーバーでできるはずだ。
ということで,アクションアイテムは,
低電力かつコンプレッサーを伴わない自然空冷のみで作動するプロセッサ,メモリなどのハードウェアおよびテクノロジの開発
個々のプロセッサ性能を高めるのではなく,並列処理化によるスピード追求
自然空冷のみで十分動く筐体,ラック,サーバールームの設計
寒冷地のみにサーバーを置き,クラウド利用する形態の充実
徹底したシンクライアント(おそらくソリッドステート)化によるオフィスの消費電力の節減
こんなことを,世界に先立って日本が立ち上げていく。こういうことができるのではないか。
これこそが,来るべき節電時代の切り札になる。
ここで間違ってもやってはいけないのは,日本独自仕様を作ってしまうことだ。
テクノロジーはあくまでグローバルなものを踏襲する。
これで,世界中から日本の寒冷地クラウドを利用してもらえるようになるはずだ。
クリーンな電力,環境にやさしいサーバー。そこそこ性能も出る。
この路線を推し進めれば,利用者は世界中から集まって来るはずだ。