私の父は晴れ男である。一緒に旅行に行くと,たいてい晴れる。
メルボルンに滞在すると,メルボルンはその間ほとんど晴天となる。
私も最近,旅行先や,自分が催した野外イベントで,天気にたたられたことがない。
どうやら,晴れ男は私に引き継がれるのではないかと感じている。
もっとも,父の威光は84歳となった今も衰えておらず,二代目襲名ままだまだ先の話となろう。
父は,先日も上海に母を伴って旅行してきたが,ほぼ全工程で天気に恵まれたそうだ。これに対し,私の母方の祖母は雨女だった。
農家の出であったが,晩年は,私の実家,つまり東京の中野の家に同居していた。
ひでりが続くと,茨城の実家から葉書きがきて,お呼びがかかる。
どれ,行ってくるかとばかり,出かけると,霊験あやまたず,たちどころに雨が降ったそうだ。
この二人が揃って同じところに出かけるとどうなるか?
一家でスキーにでかけ,まだ弟が小さいので子守に祖母もついてきたことがある。
連日の吹雪。しかし,後半は回復し,最後の日は雲ひとつない晴れとなった。
箱根に一泊旅行したときも同じ。初日は雨。次の日は晴天となった。
その祖母は,私が大学生の時に亡くなった。
これで私は旅先で悪天候に会う確率が減った。
と安心していたら,ここに,強敵が現れた。
義理の妹。つまり私の妻の妹である。
恐ろしい実績を持つ。
海外旅行に行くにあたり,5回連続ぐらいで,まともに飛行機に乗れなかったという。
すべて天候が理由。
あるときは,飛行機が飛ばず。
また,あるときは,雪などによって鉄道がストップ。高速道路も渋滞し,空港までたどり着けない。
ゴールドコーストで我々夫婦と一緒にゴルフをしたことがあるが,フェアウェーのまん真ん中にいるときに,突如として豪雨に見舞われ,なすすべもなく,ずぶ濡れになった。
一度ならまだしも,これが次の日も繰り返されたのであるから恐れ入る。
後日,私を除いて,妻とこの義妹ふたりして,メルボルンでゴルフした際にも雨が降った。
彼女のたっての願いで,冬にも関わらず野外BBQをやったときも,雨となり,震えながら肉を焼いた記憶がある。
さて,先週,日本に帰ったが,我々親子3名,義母,そしてこの義妹とその娘,合計6名で温泉旅行に行くことになった。
最初の目的地は新潟県松代(まつだい)の近く芝峠という温泉だ。関越道を六日町インターで降り,西に。峠を越えて,十日町に出る。十日町からさらに西に30分ほど走り,松代に出たら,そこからさらに山道を10分ほど登ったところである。
11月3日。文化の日に出発。
ちなみに,11月3日というのは晴れの特異日として知られている。前後の日と比べ,偶然とは思えないほどの高確率で晴れる日である。
義妹とはその前々日の1日に会っており,そのとき,「あさっては雪らしいよ!」と言っていた。1日は初夏を思わせる暑さだったので,まさかと思ったが,天気予報を見たらそのとおりだった。2日から寒波が襲来して,全国的に荒れ模様。北海道から東北,中部の日本海側では雪となるという。
明けて2日。東京はときおり雨がぱらつく程度だったが,前日の暑さはどこへやら,気温はどんと下がってメルボルンの冬もかくやという寒さとなった。
WEBで調べると,2日夜の時点で,信越道,信濃北インター以北がチェーン規制となってるではないか!
しかし,我々の目的地である上越方面はチェーン規制などはなかった。このまま明日まで持てばなんとかなる。
出発日の3日。東京は冬型の気圧配置で,晴れ上がった。これで一応特異日の面目は保たれた。しかし,山の向こうは雪や雨ということは分かっていた。
関越自動車道を北進。山が迫ってくると,見るからに山の背後の上空があやしい。向こう側は降っているんだなと分かる。
そして小説「雪国」の冒頭そのままの風景が,関越トンネルを抜けたところに待っていた。
幸い,チェーン規制はなく,標高が下がると雪はすぐ雨に変った。しかし,目的地の松代にも雪がたくさん残っていた。
この雪は,もちろん,ご当地の初雪。初雪としては,例年より1ヶ月早いのだそうだ。そりゃそうだろうね。
雪女恐るべし。
しかし,晴れ男二代目も負けてはいない。次の日は晴れとなり,絶好の紅葉日和となった。
この雪女。ダンナと行動をともにすると,それほどでもない。たぶんダンナも晴れ男なんだろう。