旧友を見舞う

オジー小娘三人組のお付きで,大わらわの今日このごろ。ブログもなかなか,ままならない。今日は先週火曜日のことを書く。
この日は「D Day」。DとはDisney LandのDである。そう,この日,ご一行様はディズニーランドにお出かけだ。
幸い,私の従姉が引率を引き受けてくれた。舞浜の駅まで送り届けたら,今日は我々のお役目はおしまい。

今回の帰国,私には,どうしてもこれだけは果したいという,ひとつの課題があった。
4月15日付の記事にある,脳卒中で倒れた中学,高校同期の友人を見舞うことだった。

この機を利用し,午後からそのお見舞いに出かけた。
小娘に振り回されて,毎日忙しいとはいえ,まがりなりにも休暇をとって,こうして東京に遊びに来ているのである。このぐらいしなくちゃ罰が当たるというものだ

今回も,本人のために,詳細は書かない。しかし,脳出血の事後がどうなるかは,推して知るべしである。
一応ここからは,その名前を仮にHとして書く。

幸いHは徐々に快方に向かっており,第一報を受けたときの絶望的な状況を抜け出している。
現在は,リハビリ専門の病院で,リハビリに専念している。

病室を訪ねると,誰もいない。ナースセンターで尋ねると,その日は予定が変わり,現在別の階でトレーニング中とのこと。でも,そばで見ている分には一向に構わないということで,トレーニング室に向かった。

トレーニング室に入って,中を見渡したら,すぐに部屋の中ほどに,2年前に会ったときと全く変わらぬHを発見した。表情はしっかりしている。目の光も衰えていない。そして表情も自然だし,強い意志が伺えた。
そばに,付き添いの看護師さん(あるいは専門のトレーナー?),そして奥さんも横で見守っていた。

この光景を見て,まずは安心した。もう大丈夫。そう思った。
トレーニングに専念するHは私に気づかない。先触れもせず,いきなり見舞いに行ったので,どうしたものかと迷ったが,とりあえず,目が合った奥さんに名乗ったら,初対面にもかかわらず,私がどういう人かを瞬時に分かってくれた。いかにHが日ごろから自分の周囲の人間関係に腐心しているか,ということもさることながら,夫婦間の意思疎通,そして何より奥さんが,今では,ほとんど会うこともない旦那の旧友のことまで頭に入れているということに,感動を覚えた。

そのやりとりを聞いて振り向いたHが「おう!」と声を出した。いつもどおりのしっかりした声だった。これだけなら,「おまえ,何で入院してるんだよ!」なんて軽口がたたけそうだ。
しかし,一旦そのトレーニングを見れば,いかに現在の状況が厳しいものかを思い知らされる。見ていて痛々しい。この一言だ。

私が奥さんと話している間も,Hは真剣な表情で運動機能トレーニングに取り組んでいた。時には苦笑いし,時には苦痛に顔をゆがめながら,単純だが,本人にとってはとても困難になってしまった作業を繰り返していた。

回りには,Hより状態の悪い人もいれば,良い人もいる。作業がうまくなった,あるいは早くなったと褒められて,満面笑みの人もいる。でも皆,程度,回復のスピードはまちまちながら,快方に向かって努力している姿は変わらない。Hもその一人であり,発症から約3ヶ月としては,まずまずの回復ぶりと言っていいだろう。

それは,突然のものだったらしい。血圧は前から高めだったという。しかし,予兆のようなものもなかったのだそうだ。しかし,今思えば,その前,普段夜の遅いHが,やたらに長く眠っていたのだそうだ。これが本当に予兆だとしたら,良いことを聞いた。

トレーニング終了後,ロビーに行って,さらに30分以上話しただろうか。夫婦水入らずのところ,迷惑も顧みず,ついつい長居をしてしまった。奥さんは,トレーニングにつき合わせてしまったことを謝っていたが,私にとっては病室でただ話すより,Hが今取り組んでいることを実際に目にすることができて,本当によかったと思い,そのとおりをお伝えした。

次に会えるのはいつになるか分からないが,そのときには,確実にずっと良くなっているだろうと信じている。あいつのことだ,きっと良くなる。
「まあ,あせらず,ゆっくり養生しろよ。」
そう言って病院を後にした。
明日はわが身である。私も気を付けなければ。

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