スモールワールド

ニュージーランド旅行紀2回目。今回の目的地は,オークランドの北,車をぶっ飛ばして4時間ほどのところにあるBay of Islandというところである。
ニュージーランドは小文字の「i」のような形の島である。上の点にあたるのが北島であるが,実際にはこの北島の北の左右の角が尖がっている。特に北西の尖がりは長く,カブトムシの角のようである。
この角の付け根付近が実はもう,もげかけていて,S字状になって,かろうじてつながっている。そこがオークランドである。街の中心がS字の中央の北岸。北は島の東海岸から,南は島の西海岸から海が侵食しているが,どちらもかろうじて首の皮一枚でつながっているのだ。
そして,角の先端が本当に尖がって,細くなるちょっと手前の東海岸にBay of Islandがある。

名前のとおり,大小の島がある湾で,風光明媚。イルカ元気かと呼べば答えて顔を出す。そのぐらいイルカとの遭遇率が高い。地元クルーズ会社によれば,遭遇率は90パーセントとか。もしお目にかからなかった場合は,料金の一部払い戻し,または次回の無料券がもらえるという,保証つきのイルカツアーもある。温かい季節には,クジラやシャチも出るそうだ。

メインの街はパイヒアというマオリ語の地名。メインといっても,本当に小さな村である。海沿いの道にあるサービスアパートメントで3泊した。この湾の向って右側が奥深い入り江になっており,すぐ向かい側のラッセルという,さらにこじんまりとした村まで,陸路だと1時間ぐらいかかりそうだ。フェリーで行けば15分かからない。

ということで,パイヒアに着いた翌日は,まずフェリーでラッセルの街を訪ねてみた。フェリーのお客は我々を合わせても10人に満たない。
ラッセルについてみると,日曜日のため,閉まっている店が多い。え?ここ観光地だろうが。日曜日に閉めてどうすんだよ。街中も閑散として,人影はまばらである。ラッセル博物館というこの街随一の見ものとおぼしき施設も,今日は日曜日なのでお休み。こういうことでいいんですかね?「いいんです。この人出のなさを見ればわかるでしょう」と,答えが返ってきそうだが,その答えを発する人がそもそも見当たらない。
こんなに閑散としたさびしい街なのだが,ラッセルは,その昔,捕鯨基地があり,びっくり仰天!ニュージーランドに白人が入植して最初の首都だったんだそうだ!歴史のある所だったんだ知らんかったなー。しかし,今では人口100人いるのかというぐらいさびしい街である。これが首都だったなんて!

日曜でもやっている数少ない店をひやかして歩いた。
途中,店員に「結婚式で来たの?」と聞かれた。ああ?ちがうよ。何言ってんだ?「ナーナー」と思いっきりオージーなまりで否定。
次の店は,絵や写真のギャラリー。なかなかすばらしい作品もある。ここの店番のおばさんがまた,「結婚式で来たの?」
え?さっきから,なんで結婚式って聞くんだ?さすがに2軒続けて同じ質問をされて,不審に思い,妻が聞きただした。

すると,なんと,前日にこの村の教会で,日本人の女性と,ニュージーランド人の男性の結婚式があったんだそうだ。で,我々は花嫁の家族と間違えられていたというわけである。瀬戸の花嫁NZ版!どなたか存じませんが,おめでとうございます。

さて,一旦パイヒアに戻り,アパートで昼食を摂り,午後からはパイヒアの北隣にあるワイタンギの丘に行った。ここはワイタンギ条約という条約が締結されたところだそうだ。なんでも1840年にイギリスとマオリの人々との間で交わされた条約で,これでニュージーランドが正式にイギリスの植民地と規定された。これを機に,対岸のラッセルが最初の首都として定められたわけである。

ここには当時のイギリス人公使の公邸が残っており,ここを資料館として一般公開している。
受付で入場料を払った。ここにいたのはからだの大きいマオリのおばさん。
「パンフレットは,ええと,日本語でいいのかしら?」
肯定する我々を見て,日本人と分ると,
「実は昨日,日本人が結婚したのよ」
そうそう,知ってるよ。
「ラッセルでしょう?今朝ラッセルに行ってきましたから,知ってます。」
「その花婿は,私の甥っ子なのよ!」
ええ!何たる偶然。
そうか,その日本人の女性のお相手は,マオリの血が入っているんだね。
最初は「すごい偶然」と思ったが,この人の少なさを思えば,偶然ではなく,ここの世間が狭いというのが正解だろう。

ということで,今回は,Bay of Islandはスモールワールドである。というお話しでした。

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