歯医者ものがたり(その1)

私のこのズボラな性格は,子供時代からのもの。いわば生まれつきである。まあ,親譲りという言い方もあるが,その親だって親から授けられたものなのだろうから,責任取れないだろう。私も親を恨んだりはしていない。

していないが,ズボラはズボラであって,これが生まれつきというのは隠せない事実である。そして,歯も生まれつき弱かったのだろう。

結果として,子供のころから歯は問題だらけだった。

歯磨きがいい加減だったことは否定できない。しかし,歯を磨かないでも虫歯が一本もないやつもいる。どうしてだ!

とにかく私は歯が弱く,幼稚園のころは,味噌っ歯だった。
永久歯に生え変わっていき,味噌っ歯はなくなったが,永久歯は,生えるそばから虫くいになっていった。今では治療していない歯なんかないと言っていい。

そのうちのいくつかは,本当に致命的な虫歯となった。

挿し歯が1本,これは不幸中の幸いというか,挿し歯にしたついでに歯並びを直して挿してもらった。
しかし,神経治療した歯は5-6本あると思う。

メルボルンに引っ越してから,1-2年経ったころ,奥歯のクラウンが一つ外れた。
当時の勤務先のそばにある歯医者に行った。
レントゲンを取り,その結果を見た歯医者が首を傾げた。
通常奥歯にはそれぞれ,3本だか4本だかの根がある。
ところが,神経治療は,虫が食ったところに一番近い根だけに施されていて,後は放置してあったのだ。
これは,こちらでは考えられない治療だという。神経に虫くいが到達してしまった場合,その歯の神経はすべてとりのぞくのが鉄則だそうだ。

ところがそうなっていない。これは昔の日本の治療方法が,現在の常識では考えられないものだったということだ。

その件が一段落して,10年以上事なきを得ていた。もう虫がくう場所もほとんどないし,最近は電動歯ブラシと歯間ブラシで念入りに手入れしているので,虫歯にはならなくなった。

しかし,上記のように,昔の治療が不完全だったため,問題を抱えている歯が一本あったのだ。

右上6番の歯がそれだ。
ときどき神経痛のような痛みが出る。この神経が胸とつながっており,歯と胸とその一体が痛くなり,夜中に起きることもあった。
すると,逆に,この痛みは心臓が引き金ではと疑ったこともある。狭心症では?しかし症状が微妙に違った。
どうも,甘いものを食べたりするとひどくなる。ということがだんだん分かってきた。そこで,甘いものを控えたり,食べてしまったら,お湯で念入りにゆすいで見たり,歯間ブラシでその歯の周りを念入りに掃除したり。こういったことで,だいぶ痛くなる頻度が減った。
しかし,どうも胸の痛みは根絶できなかった。
やはり,胸にも原因があるかもしれない。実際そうかもしれないという要因もみつかった。これについては,またの機会に書こうと思うが,とにかく,これについては一応解決した。

結果として,最近では,この夜中の胸の痛みはほぼ収まっていた。でも100%なくなったのではなかった。
どうも,まだ歯がおかしいのではないか?
しかし,かかりつけの歯医者に訴えても,特に悪いところはないという。

ところが,半年前の定期チェックで,レントゲンの結果,クラウンの中に空洞があるといきなり言われた。
その歯医者はインプラント(抜歯した後に人口歯根を骨に差込み,そこに人口歯をつける)の専門。是非インプラントにしようと強く薦められた。
費用は約4000ドル。保険を適用しても3000ドルぐらいはいきそうだった。
迷った。
そのうちにまた半年ごとのチェックのお知らせが来ていた。どうしようかなと思っていた矢先。
そのクラウンが外れたのである。

はたして,その中には大きな空洞ができていた。
そして外れたクラウンを見てびっくり。
なんとその空洞ができたあたりに直径0.5mmぐらいの穴が開いていたのだ。
これでは,ここから食べ物が入り込み,虫歯が内攻するのも当たり前だ。

この穴,いつ開いたのだろう?自然に開いたとは思えない。最初からだったのか?それとも誰かが削ったのか?故意か過失か?
このかかりつけの歯医者。かれこれ10年も見てもらっているのだが,いつもここだけ不安を訴えていたにも関わらず,本当にこの穴に気づかなかったのだろうか?

そう思ったら,急にこの歯医者が信用できなくなった。

つづく

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