だいぶ日が経ってしまったが,恐怖のオールナイトガールズパーティーについて。先週の金曜日(8月10日)は,4時に退社。会社のそばのケーキ屋に行き,前日注文しておいたバースデーケーキをピックアップ。家路を急ぐ。帰ってみると,すでにおひい様は帰宅していた。いっしょに御学友もやって来ていて,すでに着替えを済ませて,宴会は始まっていた。リビングルームのソファーは移動されていて,テレビの前のスペースが最大限に拡張されている。人数を数えたら,この時点で娘を含めて6人。すべて同じ学校の子である。
オーストラリアの学校は,イギリス式の教育システムがルーツにある。したがって,ハイスクールになると,ハリーポッターでもおなじみの「ハウス」に振り分けられる。これはハイスクール6年間,基本的に変わることはない。娘の学校には五つのハウスがあり,7年生から12年生までが縦割りで振り分けられているわけだ。この時点では,同じハウスの同級生が3人,それに帰りのトラムでいつも一緒で,最近仲良しになった子と,その子の親友が加わった。この二人は別のハウスの同学年。
そして後から現れたのが,小学校まで同級生で,今は別の学校に移った子が一人。そして最後に同じハウスの同級生がやってきた。総勢8名の小娘どもがこの夜,ドンチャン騒ぎをするわけである。ちなみに,最後に現れた子は,自宅でパジャマに着替えてから車で送ってきてもらった。まさに,万全の態勢での登場である。
PCのある書斎は,彼女らの荷物で足の踏み場もない。学校のかばん,ユニフォーム,楽器,着替えの袋,寝袋,その他諸々。どれが誰の持ち物かも区別がつかない。ユニフォームも畳むでもなく,脱ぎ捨てのまま,あるいはかばんにグシャグシャに突っ込んである。妻によれば,彼女が帰宅したときは,これが玄関一体からリビングにかけて散乱していたため,とにかく書斎にかたづけさせたとのことで,これでもだいぶマシになっていたわけだ。
というわけで,日本人の目から見ると,オーストラリアの女の子は,かなりワイルドである。だが,この程度で驚いていては,ここで親としてやっていけない。この後さらに驚くべきことが次々起こるのである。
全員そろったカシマシ約二乗の小娘どもは,ニンテンドーWiiやDSをやったり,しゃべったり,お菓子を食べたり,ピアノを弾いたり,歌ったり踊ったりと,それぞれ好き勝手に騒いでいる。おひい様は,当たり前だが完全に英語モードである。友達が一人二人だと,我々親と話すときは日本語になるけど,このときはもうディープに英語モードになっていて,我々にも普段の英語で話しかけてくる。こうなると,騒がしいだけでなく,鬱陶しいことはなはだしい。
さて,そろそろ餌の時間ということで,近くのピザ屋に電話してピザを注文。15分後に取りに行った。帰ってみると,全員でDVDの映画を見ている。みんながDVDを持ち寄ってきたので,合計10枚以上ある。こんなに一晩で見られるわけないじゃん!まあ,それはともかく,ピザの箱を開けたが,映画に気を取られたせいか,あるいは,お菓子を食べていて,おなかはそれほど空いていなかったのか,ピザの減り方はそれほどでもない。その間隙を突いて我々もピザを食べる。何とか足りてほっと一息。さて,次はいよいよメインイベント。ケーキだ。お決まりの歌を歌い,ろうそくを吹き消し,切り分けるとハイエナのように平らげていく。やはり,デザートは別腹だった。
一連の餌やりには,使い捨てのコップとお皿,ナイフ類を使用。これを片付けたところで,我々二人はもうギブアップ。疲れた。
リビングルームは完全に小娘どもに占領されて,そもそも落ち着いて居る場所が無かったところにもってきて,寝る支度ということで,マットレス,布団,寝袋などを持ち出し,ソファーやマットレスの上に寝る場所を確保し始めたから,活動領域はソファーで囲まれたスペースを逸脱。リビングルーム全体が完全に占領されてしまった。こうなると,もう我々は寝室に引っ込むしかない。寝室でDVDを見ながら過ごす。DVDの後はもうやることもないので,寝るしかない。しかし,隣では,深夜に向って音量を絞るどころか,ますますエスカレートしていくお嬢様たち。寝るも地獄。起きるも地獄。仕方なく,眠くなって,読めなくなる状態まで本を読んで,床に就く。この時点で深夜1時をとっくに回っていたと記憶するが,お嬢様方が寝静まったのが何時かは知らない。
翌朝は,8時半ごろ,再びお嬢様方の話声で目が覚める。タフである。朝食はパンケーキ。かなりの数が焼けたので,テーブルに持っていくと,数に構わず一人で何枚も取ってしまうお嬢様がいたりして,全くありつけない子が出てくる。もうちょっと考えてよー。と言いつつ追加を焼く。親の分まで残らず,我々は後でシリアルを食べた。
9時ごろ,一人が学校で劇の練習があるというので,送り出す。その後,10時過ぎぐらいから三々五々,親の迎えがやってきて,一人,二人と帰っていった。その間,我々は,片付け,掃除に終始した。最後の子は親の都合で3時ごろまで居残った。ほぼ24時間のご奉仕であった。最後に残った荷物を見せると,「これは私のじゃない!」というものがたくさん残った。
結局,この最後の子を除く全員!6人のお嬢様が何かしらの忘れ物をした。ユニフォーム一式,通学用の靴,ジャケット,寝袋,iPod,家の鍵,洗面具などなど,実に多岐に亘った。親が迎えに来て,我々が「忘れ物はない?」と確認しているのに,この有様である。みんなボケまくりだ。
「楽しかった?」と娘に聞くと,疲れ気味ながらも「うん!」という返事。こうして大勢に囲まれて,誕生日を祝ってもらえるというのは,本当に幸せなことである。
長い長い誕生日関連の行事がこれで終わった。
ところが,最後に爆弾発言。
「ところでさあ,I(今回泊まった御学友の一人)ったらさあ,シラミがいたんだよ。」
「えー!ホント!?」
「うん,はっきり見えた。」
これは大変じゃあ!
なお,断っておくと,これは,それほど異常なことではない。オーストラリアの小中学生に,シラミ発生は日常茶飯事である。
普通,こっちの子は毎日髪の毛を洗ったりしない。でも,毎日洗うのはシラミにとっては却ってよくないということも覚えておいた方がいい。ひとたびシラミが取り付いたら,洗髪するだけでは退治できないし,さらさらの髪の毛と地肌はシラミにとっては快適な環境なのだそうだ。だから,一日置きぐらいに洗うのが理想らしい。しかし,もっと洗髪をサボっている不潔な人がかなりいるし,それでも別段不潔と思っていないのが一般的である。そこにもってきて,乾燥した気候。こういう環境で,学校では大勢が肩をくっつけんばかりにして,毎日長時間いっしょに生活している。するとシラミはどんどんうつっていくのである。
日常茶飯事とはいえ,ひとたびうつされると,駆除が大変。今回は,まくらやマットレスを使わせたので,あわててシーツと枕カバーを外し,すべて洗濯した。数日様子を見たが,今のところ被害がないようなので,ほっと胸をなでおろしたところである。